日々じゃーなる

日々の生活でおもったことをなんとなく、でも結構まじめに綴るブログです

留守電の思い出

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大学に入学した年、バンド系のサークルに入部したのだが、入部した学生の中で携帯(当時はPHS)を持っていたのは、5%未満だった。
翌年の入部生の所持率は80%前後。
この年に、いかに急速に携帯が普及したのかが分かる。
携帯をもつのは、よほどのお金持ちや、相当に忙しいサラリーマンだけ、と思っていたが、その空気もあっという間に変わった。
 
さて、この投稿は、携帯電話の普及についてではなく、携帯電話がまだ普及してないころだから当然の様に持っていた固定電話の留守電にまつわる思い出だ。
 
余談だが、当時固定電話を契約するためには、電話加入権という権利を購入する必要があり(いまもあるのかどうかは知らない)、その金額が7万くらいだった。
学生にとっては恐ろしく高額だが、電話がないと連絡手段がなにもないので、しぶしぶ払っていた。
自分もその1人だ。
 
固定電話の留守電もいまはあまりみかけなくなったので、一応説明しておく。
 
外出する際に留守電機能をONにする。
すると、電話がかかってきた時に流されるメッセージがプレビュー的に再生され、その後留守電ボタンが点灯する。
帰宅後に電話を確認し、留守電が点灯していたら留守電なし、点滅していたら少なくとも1件以上の留守電が入っているということだ。
しかし、留守電メッセージが再生されている時でも受話器を上げれば通話になるので、それを期待して応答メッセージを聞き、録音状態になってから無言で電話を切る人も多く(というか、そのほうが多かった)、その場合は、誰かから電話があったんだな、ということしかわからない。
(発信者番号通知が固定電話に実装されるのは、もっと後のことだ)
 

留守電の点滅1回目

 
ある日帰宅すると、例の留守電ボタンが点滅している。
多分無言だろうなと思って録音を確認すると、
 
「どうも。高橋(仮名)です。明日は楽しみですね。三角公園で朝10:00に待っています」
 
とのこと。
声から推測される年齢は60歳手前くらい。男性。おっとりした口調。高橋さんだ。
 
固定電話の場合は、市外局番がなくても発信可能で、つまり市内にかかるので、この電話の三角公園というのも、比較的うちから近い場所にある三角公園だろうと思われた。
 
しかし、、、、
高橋さんのことは知らない。
明日そんな約束をした覚えもない。
つまり、間違い電話、いや間違い留守番電話なのだ。
 
上記したとおり、発信者の番号等はわからないので、対処のしようがない。
唯一の方法は、メッセージにあった時間と場所に自分が赴いて、間違いであることを伝えることだが、別の用事もあるし、そこまでしなくて良いかな、ということで放置。
 

留守電の点滅2回目

 
翌日帰宅すると、前日と同じく、留守電ボタンが点滅。
少し嫌な予感。
 
「今日は、なぜ来てくれなかったのですか。楽しみにしていたのに、、明日こそは、10:00に三角公園でお願いします。」
 
怒りと悲しさの間のような口調。おっとりとした感じはまだ残っていた。
約束をしたはずの人と会えなかった、ということと、明日再チャレンジするという追加情報以外はなにもわからない。
会えなかったのは当然だろう。
高橋さんはその人に伝えているはずだろうが、その人には絶対に伝わっていない。
なぜなら、自分が今ここで聞いているから。
 
前日同じく、もやもやしつつも、どうしようもなく放置。
 

留守電の点滅3回目

 
翌日帰宅すると、またまた留守電ボタンが点滅。
点滅の仕方に、なぜか怒りが見える気がする。
高橋さんの点滅だ。
 
「どうして来てくれないんですかぁ!!なにか不満でもあるんですかぁ!!何でも言いあえる仲じゃないですかぁ!!」
 
怒りというより、悲痛な叫びだ。
しかし、おそらく60歳前後と思われる高橋さんには、何でも言い合える仲の友達がいるのだ。素晴らしい。
、、、ということはさておき、これは可哀想だ。
高橋さんがただ番号を間違っているというだけで、一つの絆が崩れようとしている。
考え方の不一致で口論になって、というものなら致し方ないが、単なる番号間違いだ。
しかも、双方それに気づいていない。
唯一それを全て把握しているのは自分だけだ。
 
こうなったら、明日は予定を割いて、10:00に三角公園に行く。
自分の予定くらい、60代の親友の行き違いによる絆崩壊に比べれば軽いものだ(そうか?)。
 
ふと気づくと、留守電メッセージがまだ再生中になっている。
しばらく無言で、ノイズだけが聞こえる。
 
20秒くらいのノイズの後、突然
 
「あ、間違えました」
 
といって、メッセージが終わった。
 
なんなんだ!このやってもないゲームに負けた感じは!
 
しかし、どうやらことは上手く運びそうで、なによりだ。
気掛かりなのは、なぜ高橋さんは留守電録音中に、自分が間違い電話をしていることに気付いたのか、ということだ。
 
その謎は、いまだ解けていない。
しかし、60代の親友の絆があれば、どうだってよいのである。
 
携帯があり、発信者番号通知があり、もちろんSNSもある時代には味わえない、不思議な事件録。